発送電分離に伴う発電所の切り分け
おそらく、電力業界に携わっていない方々は、
発電所は発電部門に、変電所は変電部門に振り分ければ
発送電分離はできる、と考えている方が多いと思います。
しかしながら、世の中そう単純ではありません。
というのが下記の資料からも分かると思います。
こちらは、中部電力の発電・送配電事業の分離に関する資料です。
http://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/007_06_04.pdf
分離を考慮していない設計
当たり前のことですが、既存の電力設備は
発電設備と送配電設備の分離を考慮していません。
例のごとく雑な図ですが説明します。
一般的な発電所
一般的な発電所の単線結線図は、こんなかんじになります。
普通の人が考える(?)発電所はこのようなイメージでしょう。
この場合、単純にすべて発電設備と考えることができますね。
直配を有する発電所
一方で、直配を有する発電所の単線結線図の一例を下の図に示しました。
(配電線に開閉設備を入れ忘れてましたが作り直す気力がありません^^)
発送電分離の必要性がなかった時代は、変電所から供給するよりも
発電所から近隣へ直接電力供給するのが合理的でした。
そこで、発電所に発電設備と送配電設備を両方設置していました。
これを、「直配を有する発電所」といいます。
直配を有する発電所は、郊外の水力発電所に多く見られる形体です。
さて、発電所にある送配電設備なのですが、発送電分離に伴い
発電事業者は送配電事業に携わることができません。
つまり、配電設備は送配電事業者のものになります。
ということは、同じ発電所の中でも
「赤の四角で囲った部分が発電事業者の設備」
「その他の部分はすべて送配電事業者の設備」
という区分ができてしまいます。
このままでは、定期点検や設備停止の際に
権限者が分かれてしまう厄介な設備になると言えます。
また、今回記載した例は単純な構造の発電所ですが、
複数の配電線と所内設備が混じり合う構造の発電所も存在します。
そうなると、資産の分割は非常に複雑で手間のかかる作業になります。
特殊形体の設備は今後、どのように分割するか注目です。
π分岐を持つ発電所
送電線の潮流が発電所内を流れることになります。
このような形体の設備はそこまで複雑にはなりません。
区分の仕方がわかりやすく、資産分割も容易です。
しかし、「送電」は発電事業者の仕事ではありません。
「赤の四角で囲った部分が発電事業者の設備」
「その他の部分はすべて送配電事業者の設備」
となってしまい、先程と同様に
同じ発電所内で設備の権限者が分かれてしまう設備になります。
管理人の意見
発送電分離は今の電力会社の業務量をかなり増加させます。
東日本大震災以降、各電力は苦戦を強いられていますが、
電力システム改革の中、どのようにして生き残っていくのか。
従来のやり方では、今後業務は増すばかりです。
社内のシステムにも改革が必要ですね。
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