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北海道停電における系統周波数変動

北海道停電から学ぶ系統周波数制御

北海道で最大震度7の地震がありました。

そして、地震の影響で苫東厚真発電所が緊急停止。

周波数変動により連鎖的に各発電機が停止していき全停となりました。

負荷と周波数の関係性は以前の記事の天秤のイメージです。

この時の北海道系統の周波数変化について、電験の復習の意味も含めて

系統周波数特性係数」を用いて検討してみます。

twitterでも検討をされている方がいらっしゃいました。

系統周波数特性係数は、過去に電験2種2次試験でも出題されています。

(出題頻度は少ないですが)

興味がある人や電験2種2次試験を受験される方はぜひ。

系統周波数特性係数

系統周波数特性係数は、K [%MW/Hz]で表されます。

系統周波数の変動⊿Fと、発電機出力の変動⊿Pを用いると、

\(K = \frac{\Delta P}{\Delta F }\)

となります。

この定数を用いることで、発電機出力が変動した際の

系統の周波数変化を計算することができるというわけです。

さて、この”K”の意味を日本語で表すと、系統容量がK%変化すると、

1Hzの周波数変動が生じるという意味です。

この時、系統容量がP[MW]であるとすると、系統容量換算した

系統周波数特性係数は、次のようになります。

K × P = KP [MW/Hz]

KP[MW]の出力変化が生じると、1Hz周波数が変化するというわけです。

事故当時の北海道の系統状況

さて、ニュースやネット上の資料から、北海道の系統状況をまとめてみます。

・総需要:約300万KW

・苫東厚真発電所の合計出力:約165万KW

・その他発電所の合計出力:約135万KW

・北海道系統周波数特性係数:6 %MW/Hz

(系統係数については、下記リンクの片隅に記載されています。)

https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/2016/files/chousei_jukyu_12_04.pdf

周波数変化の計算

北海道の系統周波数特性係数は、6 %MW/Hzであり

系統容量が300万KWであることから、

300万 × 6% = 18万KW/Hz です。

つまり、出力が18万KW変動すると1Hz周波数変化します。

さて今回は地震により苫東厚真の165万KWが失われました。つまり

165万KW ÷ 18万KW = 9.17 Hz

北海道の系統では9Hz以上の周波数変動が生じたと推測することができます。

周波数変動が発生するとどうなる

周波数変動は電気機器の損傷につながります。

北海道電力の発電所に限った話でなく、機器の損傷を防ぐため

発電所は、周波数継電器(UFR、95L)と呼ばれるもので、

系統の周波数変動を検知すると非常停止します。

周波数継電器は、事業者により動作値は異なりますが

9Hzの周波数変動ではほぼ間違えなくトリップするでしょう。

そして、発電機がトリップすると発電機出力が不足し、

連鎖的に周波数が低下していき、今回のような停電に至ってしまった

ということが推測されます。

停電を回避する方法はあったのか

よくtwitterで、泊原子力発電所が運転していれば停電しなかった

といった議論になっています。正直、わかりません。

単純に考えて、苫東厚真の負荷を泊が持つことはできていたでしょう。

ただし、ベースロード電源である石炭火力や原子力を優先運転した上で、

負荷追従性のある電源をどれだけ確保できていたかに依存します。

そういう意味では、石狩新港LNG運転が間に合わなかったのは残念です。

 

以上、自分のわかるレベルで検討してみました。

拙い文章で申し訳ありません。

twitter等で私より詳しい方々が様々な見解を述べておられますので、

そういった方々から、これからもどんどん勉強していきたいです。

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