北海道停電 ブラックアウト発生までの流れ
北海道の地震発生からブラックアウトに至る流れについて、
電力広域的運営推進機関による検討が公表されました。
これまでは、断片的な数字等から推測により議論されてきましたが、
これにより今回の事象について理解は更に深まるでしょう。
これから先、さらに検討は進んでいきます。
さて、今回の資料がわかりやすくまとまっており、
私のブログの記事なんかはまぁ見なくても問題ありません。
ともあれ、アウトプットによる自分の頭の中の整理を込めて記します。
資料出典
電力広域的運営推進機関の資料はこちらです。
地震発生からブラックアウトに至るまでの事象について
2018年9月21日
http://www.occto.or.jp/iinkai/hokkaido_kensho/files/hokkaido_kensho_01_04_1.pdf
以下は、用語の解説です。
https://www.occto.or.jp/iinkai/hokkaido_kensho/files/hokkaido_kensho_01_sankou_3.pdf
この資料を見ていただければ。
周波数による検証について
今回の資料は、系統の状態を周波数に基づいて検証しています。
周波数から系統を読み解くための考え方は、こちらの記事にも
簡単に記載してありますが、天秤に例えられています。
系統の周波数を維持するためには、「需要(消費量)=供給(発電量)」
を満たす必要があり、バランスを崩すと以下のようになります。
発電量<消費量:発電機の回転エネルギーが消費され周波数が減少
発電量>消費量:同様の考え方で周波数が増加
というわけで、周波数の変化から需要と供給のバランスが推定できるのです。
エネルギーの過不足を”回転”によりやりくりしているイメージです。
(個人のイメージなので違ってたらすみません。)
今回の資料は、周波数データと発電機の運転状況の変化や需要の変化を
照らし合わせることで事象を検討します。
ただし、資料にも記載されている通り、エビデンスが存在する類の
現象ではなく、因果関係や推測によりデータの事実認定をしています。
地震発生前の状態
地震発生前の状態や北海道の送電線系統図について記載されております。
火力発電所は、当然のことながらメリットオーダー順に発電しています。
メリットオーダー順とは、要するにコストの安い順です。
石油火力発電所は、発電単価が非常に高いので
燃料費の安い石炭火力発電所、中でも苫東厚真発電所が効率的なので
最優先で負荷をとって運転しています。
地震発生直後1
資料がわかりやすく、書いてある以上のことはいえません。
まず、火力発電所の自動停止がきっかけで周波数が減少しています。
それに伴い風力もトリップしていますが、北本連系線からの融通、
UFRの動作により負荷遮断を行うことで回復していきます。
また、送電線事故により道東は分断され、周波数上昇により停電します。
そして、中央給電指令所から水力、火力に起動指令を出しています。
また、水力や北本連系線のAFCにより最終的に50Hzで安定します。
AFCとは、自動周波数調整装置のことです。
また、発電機の周波数調整については以前の記事を参考にしてみてください。
UFRとは、under frequency relayのことです。
周波数低下により動作し、負荷を遮断します。緊急の需要減です。
安定後、2度めの負荷遮断
深夜の地震後の情報収集等人間の活動(推定)や道東の再閉路により、
系統の需要は増加したものの、中給からの出力増指令によりバランス。
しかし、自動停止していなかった苫東厚真発電所1号の出力が徐々に低下。
追加の負荷遮断を行いますが、まだ周波数は安定しませんでした。
(結果して、苫東厚真発電所1号機はボイラー管の損傷が見られた。)
その後、ブラックアウト
その後、苫東厚真発電所が停止します。
これにより、残り全量のUFRによる負荷遮断を実施するも、
火力の出力増も追いつかず、周波数の回復ができず。
各発電所は周波数の低下によりトリップし、ブラックアウト。
勝手な所感
というわけで、以上が今回の事象でした。
前回の記事では、電験の問題に例えて周波数の動きを考えて見ていましたが、
実際の系統はそんな単純なものではなく、今回の資料のように
多数の要因が絡み合って系統周波数は推移しています。
私は系統屋ではないのですが、発電屋としても
発送電分離後の系統の安定運用について考えさせられますね。
とても勉強になりました。
また、ツイッターでもかなり高レベルな方々の意見がつぶやかれています。
これを見てさらに理解を深めたいと思います。
なかなか理解できないような気がしますが()
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