農事用電力は誰が負担すべきなのか?
電力システム改革により、小売電気事業は自由競争の世界になりました。
ただし、今回のテーマ、既得権益とも言える農事用電力に関しては
2020年以降も経過措置を継続する方針のようです。
水力発電の絡みで土地改良区との関係性を意識するためでしょうか。
また、ググると国会議員が農事用電力の値上げ反対を主張する
内容のニュース(かなり古いが)もありました。
国から意見(という名の)もあるのでしょうか。
ということで簡単に調べてみたのでまとめます。
参考資料
こちらが経済産業省の資料になります。土地改良区の作成資料です。
「農事用電力の利用状況について」
http://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/012_04_01.pdf
また、こちらは日本農業新聞の記事になります。
(全文読めるのは会員のみですが、概要はわかるでしょう。)
「農事用電力継続へ 大手10社 20年以降も当面 電気料金自由化 」
そもそも農事用電力って何?
農事用のかんがい排水・脱穀調整・育苗栽培に用途を限定して
動力を使用する需要に対して適用される電力メニュー。
何十年も前、当時の電力事情に基づいて設定されたメニューであるが、
需要家への影響を考慮して格安の価格設定である上、
未使用月の料金はかからない等、手厚く保護されている。
また、天候や営農形態で電力消費量が左右される特性もある。
土地改良区の主張
土地改良区の資料を簡単にまとめると、
・農業水利施設維持管理費に占める電気料金の割合は全国平均で25%
・撤廃されると農業従事者の負担増
・省エネのために力を入れている
ので農事用電力維持を望むというわけです。
個人的意見
小売電気事業者の立場
土地改良区が再エネを利用した発電を行っている、省エネしてる
という話は、小売電気事業者からすると、正直どうでもいい話です。
また、電力自由化による経過措置の周知が不十分というのも同様です。
むしろ自分たちが農業従事者に伝えるべき内容ではないでしょうか。
そして農事用電力に競争がないのは、それだけ優遇された料金メニュー
であり、新電力は競争する価値が感じられないからではないでしょうか。
といった具合に、理不尽なことが嫌いな私はかなりモヤモヤしています。
発電事業者の立場
上流のダムや用水路を利用した水力発電所を持っており、
水力発電設備開発の際には、現地住民の方々にも
いろいろと迷惑をかけたりお世話になっていると思います。
(当時の人間ではないので詳しくはわかりません。)
そういった中で、不文律も多々あったことと推測されます。
それらを反故にすることは許されるべきでないとは思う一方、
あることないことすべてを受け入れるのも問題です。
やはりお互いの助け合いと歩み寄りが大事だと思いますし、
不文律や取り決めを一度整理し、明文化することが重要だと思います。
さもなくば、双方の理解の違いやすれ違いの原因にもつながるでしょう。
農業振興のために
当然、電力自由化に伴い既得権益が失われた場合、
土地改良区の負担、つまり農業従事者の負担は増大するでしょう。
そうした中で、農業の発展の妨げの可能性があるのだとすれば、
政策等で保護すべきは国や地方であり、自由競争に晒されている
旧一般電気事業者の小売に負担がかかるというのはおかしな話です。
そもそも農業を特別に政策で保護すべきという考えも嫌いですが。
国として農事用電力のプランを維持したいのであれば、
他料金プランとの不公平がないような料金体系として、
これまでのプランとの差額を国が補助するなどが正しい姿と感じます。
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